アムジャディ事件判決 また一つ歴史が消されようとしている

入管問題調査会 IMMIGRATION REVIEW TASK FORCE (IRTF)

 入管施設内でアムジャデイ事件は、入管内において、職員が被収容者に対して行う暴行の執拗さ、すさまじさを私たちに教えてくれた。そして法務省入管は暴行の事実を否定し続け、裁判でも暴行の事実を隠し通した。 2001年6月国家賠償請求の判決が下された。

アムジャディ事件の発生

 1993年5月6日頃、東京人国管理局第二庁舎収容場において、収容中のイラン人男性十数人が入国警備官らから暴行を受けるという事件が発生した。その中の人であるアムジャディさんは、暴行の緒果、「第一腰椎圧迫骨折」等の重傷を負った。

 アムジャディさんが暴行を受けた2日前頃、同庁舎収容場はイラン人の抗議の声で騒然としていた。収容場の通路てイラン人男性1人が入国警備官から目をひどく殴られ怪我をするという事件があり、これを事件を目撃した多数のイラン人男性被収容者がこれに抗議したのである。 

第一腰椎圧迫骨折

 入管側は、第二庁舎全警備官を集め、制圧にのりだした。首謀者と目されたアムジャディさんを含む3人のイラン人男性を房から引きずり出した。そして後ろ手錠をかけると、通路を引きずるように連れて行きながら、頭、手、足、顔などに殴る蹴るの暴行を加えた。数日にわたる手錠の使用。隔離室への収容。同室の者が手錠でつる下げられるなど、本サイトのアリさんのケースで報告した事件である。

数々の目撃証言 

 今回のような密室の事件にしては、数々の目撃証言があったのが特徴である。まず事件直後の7月上旬、別件の民事上の代理人となった弁護士が接見に訪れ、アムジャディさんの腰の内出血や足の傷を現認した。弁護士は、面会後すぐ、アムジャディさんに対する暴行について入国管理局を問いただしたが、入国管理局は暴行の事実を否定した。

 また事件当日制圧に参加した元職員が制圧の様子や、その後の隔離収容されているイラン人を目撃し、その様子を今回の裁判で証言している。またこの元入管職員は、このころ東京入管第二庁舎内で、イラン人などの被収容者に対し、入管の職員が日常的に暴行をしているところを、目撃しており、1994年12月23日記者会見を行い、告発している。

 また弁護団や私たち支援者らは、1998年、1999年の二回にわたりイランを訪れ、アムジャディさんの証言を取るとともに、暴行の直接の目撃者であるナビディさんの証言を収集した。

 国側はアムジャディさんの負っている「第一腰椎圧迫骨折」については「1993年8月1日午後4:30ごろ、居室のトイレで転倒したときに負った傷である。」と主張し続け、暴行の事実を全面に否定した。

 2000年3月裁判で証言するためアムジャディさんは来日したが、その際、アムジャディさんの診察をした医師は、「収容当時、50歳代の元気な男性が、トイレで転倒したぐらいで、腰椎の圧迫骨折を負うことは、とうてい考えられない。」と裁判所で証言している。

証人出廷を拒否した国側

 入管側は制圧にあたった職員を証人に出廷させてはいるが、肝心の「控え室で説諭に当たった職員」すなわち暴行の実行を行った職員の証人出廷については「人物が特定できない」として証人出廷を一貫して拒否し続けた。 

相互主義が問われた国家賠償請求

 アムジャディさんは暴行から一年以上たった、1994年10月、暴行によって受けた傷害に対する国家賠償請求を起こした。原告の訴えは以下の3点に関する国家賠償請求。(1)1993年5月、東京入管第二庁舎内での職員による暴行によって、第一腰椎圧迫骨折を受けた。(2)暴行後、長期(14日間)にわたる隔離室への収容。(3)同隔離室内での5日間にわたる手錠の使用。(4)その他、不衛生な処遇環境全般。

 裁判は始め国側が国家賠償法6条「相互保証主義」を楯に救済を拒んだ。「相互保証主義」とは、たとえばイランの場合、「イランにおいて日本人がイラン政府に対して国家賠償請求できることが保証されていなければ、日本においてイラン人は日本政府に対して国家賠償請求できない。」というものである。

 これに対して裁判所は「イランイスラム共和国、民事責任法では国家賠償は規定されていない」としながらも、「イランの弁護士の証言」で「裁判官の不正行為に、国家が代位して被害者に賠償金を支払った事例」があったことをとらえ「被告側がこの件に反証をしなかった」として、「国家賠償請求に応じる責任が国側にある」とした。

 つまり、裁判所は、被告側の請求権を認める判断はしたものの、入管が主張したような「相互保証主義」が憲法や国際人権条約に違反しているかどうかについての判断は避けたことになる。が、いずれにせよ、この判決は、今後日本国内でイラン人が国家賠償請求を起こした場合には必ず参照され、一定の拘束力を発揮することにはなるだろう。

一部勝訴、だが暴行を否定した判決

 判決の内容は「被告(国)は原告に対し、金100万円を支払え。内訳は30万円は弁護士費用。70万円が慰謝料。」上記の慰謝料は「手錠の3日間の使用」「隔離室への長期収容は違法性」を認めてのもである。しかし暴行の事実については「有形力の行使はあったものの、暴行があったとは言えない。」と被告(国)側の主張を取った。

 また入管施設内での劣悪な処遇(汚れた毛布や洗面所シャワー室などの不衛生な環境)について、裁判所は「原告の主張を認めるに足る証拠はない。」として切り捨てた。

 今回の判決は「被告・原告のどちらからも控訴させない」 という「バランス」に配慮した結果であるような気がする。本件が提起している、入管施設の有り様の真実を見極めようとする姿勢が欠如したものであると言わざるをえない。