本文へジャンプ


マナーなんて簡単だ!

テーブルマナー編

食事中は意外と見られている。品のいい振る舞いでオトコを上げたい。
だが、過剰に振舞うのもかっこ悪い。日本のレストランでちょうどよいマナーとはどんなものか。
専門家に話を聞いた。

「テーブルマナーは『どうしたらお互いに気持ちよく過ごせるか?』を考えた結果の、ひとつのルールです。そのルーツは、イギリス海軍の作法なんですよ」
 と、マナーデザイナーの岩下宣子氏は言う。海軍の名残は、現在にも継承されている。例えば、両手は常にテーブルの上に出しておくものなのだそうだが……。
「それは、『テーブルクロスの下で何もしてませんよ』という意味なんですね。こっそりと拳銃や隣の女性の手を握っていませんからご安心を、という男同士の礼節なんです」
 テーブルマナーは、ナイフやフォークを上手に使いこなすことよりも、「礼節の心を持って、相手を不快にさせない食べ方や所作を守ることのほうが大切」なのだ。 



着席までのエスコート

難易度の高い“椅子引き”は接客係に任せる

 どんな客がスマートでカッコいいのだろうか? という問いに、「女性をエスコートしているお客様です」と即答したのは銀座・ホテルSのN氏。氏がマネージャーを勤めるダイニングルームには外国人客も多い。
「こなれた彼らは通された席で“連れの女性の椅子を自分で引いて座らせてあげます。当然、周囲の注目度も高いですね」
 けれど、日本人がそこまでする必要はないと諭す。
「文化の違う日本人がそこまですると違和感があります。かえって女性を困惑させかねませんね」
 椅子を引くのは接客係に任せる。男性は女性が座るまで、きっちり見守ればいい。日本男性のエスコートは、入店時に女性の上着を脱がしてあげるぐらいが適当なようだ。
「コートの着脱はレジやカウンターの辺りで行い、食べている人の失礼にならないように気をつけてください」(岩下氏)
 脱いだコートと一緒に、女性のハンドバック以外の荷物もクロークに預ける。そして、接客係を先頭に女性、男性の順に席へ向かう。



オーダーに迷ったら

店を味方につけて、さりげなく“場”をリードする

 アラカルトで頼むのが通、コースは野暮、というイメージがあるけれど、それは間違い。
「コース料理はシェフが考えた、味覚、食材などのバランスのよいメニューで構成されています。いわばシェフの自信作。野暮な選択とは思われませんよ」(マネージャー・N氏)
 とはいえ、コースはボリュームがある。たくさん残すのは大人として恥ずかしい。食べ切れそうにないのならアラカルトが無難だ。
「前菜かスープ、サラダとメインで2〜3皿頼むとよいですね。ただ、お相手がコースの場合、皿数が合わずにお食事のペースがずれてしまいます。お相手との関係にもよりますが、その点だけ気をつけてください」(マネージャー・N氏)
 メニューを見ても分からない料理は気軽に質問すればいい。接客のプロですら、「どんな料理なのか、シェフに聞くまで知らなかったメニューもある」というくらいなのだから。
「料理への質問も、彼女の料理や苦手なものも含めて、すべて男性がオーダーするのが理想です。でも、記憶に自信がなかったら『鴨は食べられる?』、とその場で聞いてあげて、『じゃ、お魚にしようか』とリードして、会話を楽しみながら決めてゆくのもよいと思いますよ」(マネージャー・N氏)




店側への意思の伝え方

マナーを使えば洗練された振る舞いに

 テーブルマナーには便利な側面も多い。例えば「無言で「ごちそうさま」と伝える“サイン”がある。左の写真がそのサインだ。
「お皿の上のナイフとフォークの置き方で、食べている途中なのか、食べ終わったのかを示すことができます。食後のサインは、フランス式、日本式、イギリス式などがありますが、日本式を覚えておけばよいでしょう」(岩下氏)
 これを覚えておけば、「食べている途中なのに下げられそうになる」というアクシデントも防げる。「男性は女性との食事のペースが合わないことも多いですよね? 彼女がまだ食べているのに、自分だけ『ごちそうさま』のサインを出してしまっては、女性に対する気配りが足りません。そんなときは、ひと口分、残して食事中のサインをしておけば、お相手をせかさずに済みますよ」(岩下氏)
 ナプキンを置く位置でも中座か、帰るのかの意思表示ができる。
「中座のサインはありますが、基本的にお食事中の中座はタブーです。どうしても…というときはナプキンを椅子の座面に置いて席を立ちましょう」(岩下氏)
 もしもイレギュラーなことで接客係を呼びたいなら、声も手もあげることはない。視線を合わせてほんの少し頭を下げる。一流店なら、これらのサインは必ず通じる。

ナイフ、フォークで伝えるサイン
                    
ナイフはどんなときでも、刃先を「自分」に向けておくべきもの。
写真上 「食事中」のサイン。フォークは写真のように伏せて置く。
写真下 「ごちそうさま」のサイン。フォークは安定するように、先を上向きに置く。食べ残したものはナイフの背の上部にまとめればOK。




ナプキンで伝えるサイン

写真上 中座するときはナプキンを椅子の座面に置く。戻ったときにサービス係が椅子の背もたれにかけ直している場合もある。

写真下 店を出るときはテーブルの上に置く。ナプキンを丁寧にたたむのはNG。汚れている面を内側にして隠しながら、無造作にポンと置こう。





スマートに見える食べ方

過剰にしない、それがいちばんカッコいい

 食べることを難しく考える必要はない。
「特別なパーティーなどでもないのに、男性がマナー本に書かれたイロハを忠実に再現するのは、逆にこなれてない印象を与えます。噛むときは口をつぐむ、食べながら喋らない、テーブルにヒジをつかない……。子供の頃に注意された“お行儀”レベルを、談笑しながらもきっちりこなす。こうしたことが大事なのです」(岩下氏)
 行儀の良し悪しを左右するのは姿勢だという。
「正しい姿勢を維持するには、椅子に深く腰をかけつつ、背もたれには背中をつけない。その姿勢でテーブルからこぶし、1つ半から2つ分ほどのスペースをあけて座ります。食事中に足を組むのはNGです」(岩下氏)
 姿勢をよくしていれば、お出の動きなどの動作は自然と上品に見えるという。
「お料理やパンはすべて、ひと口サイズに切って口に入れる。食べ物を口に入れるときは目線を伏せます。テレビ番組では食べるときにカメラ目線にするせいか、日常生活でも、目線をあげたまま食べる人が目立つので、これは注意してくださいね」(岩下氏)
 基本のナイフとフォークの使い方は左の写真のとおり。だが、料理によっては難易度の高いナイフテクが必要なものもある。
「例えば、骨付き肉など食べにくいために、お見合いや接待などのお食事では避けたほうがよい料理があります。でも、気心が知れたお相手との食事なら、そんなに神経質にならなくても大丈夫です」(マネージャー・N氏)
 食べ方が分からなければサービス係に「どうやったら、上手に食べられますか?」と素直に聞けばよいのだそう。
「フィンガーボールが出てくれば、手を使ってOKという意味です。でも、切り方のコツもあるので質問してみてください」(マネージャー・N氏)
 どうしても格好つけたい…。そんなときは、写真のような肉料理が簡単に食べられておススメだ。

基本のナイフ、フォーク使い

写真上 人差し指でナイフ、フォークの「くびれ」部分に軽く力を入れて安定させる。フォークで料理を押さえながら、ひと口サイズを切って食べる。ナイフは押すときに切れるので、引くときには力を抜くこと。
写真下 指先がぎこちないと同じ手でも不器用に見えてしまう。


手はテーブルの上、軽く握って


写真上 食事中はテーブルの上に手を出しておく。正式には「カラトリーの外側に手首から先を軽く乗せる」ものだが、偉そうに見えてしまうのが難点。相手によっては、写真のような置き方がよい場合もある。

ワインに薀蓄は不必要

「ソムリエがいるのだから知識がなくても大丈夫。知識を披露する人よりむしろ、グラスをずっとキレイに保って飲んでいる人のほうが素敵です」(岩下氏) 
 ソースの多い料理を食べるとグラスのふちに唇の跡がつく。グラスに口をつける前にナプキンで口の周りを拭う習慣を身につけたい。
「テイスティングは男性の役割。ここは率先して格好つけて味見をしましょう」(岩下氏)
 念のため、テイスティングの手順のおさらい。
@グラスを奥に傾けて色を見てから香りを確かめる。
Aテーブルにおいてグラスを回し、ワインを“空気と結婚”させて、再び香りをチェック。
Bゆっくりと口に含み、鼻で息を吸いながら飲む。
「飲んだ後が大切でワインす。一度、あらぬ方向に視線を投げて『味を見てる』表情をしてから、ソムリエに微笑めば完璧です」(岩下氏)
 これ以上、飲めないときは注がれる前に、グラスのふちを人差し指と中指でふさげばよい。
  



会計のタイミング

彼女が化粧室に立った瞬間がチャンス

 食後のコーヒーが終わりそうなときに、女性はきっと化粧室に立つ。その瞬間、サービス係にすばやく目配せをして、会計を済ませるのが大人の男。もちろん、支払いは現金ではなく、スマートにクレジットカードを使おう。
「接待などで3名以上で食事をするときは、コーヒータイムに自分がお手洗いに立って、お会計を済ませましょう」(岩下氏)
 また、接待のつもりが、相手に先に支払いをされてしまって途方に暮れる人も多いのだそう。
「予約時に『私が支払うので、ほかの人からはもらわないように』と念を押しておいたほうが安心ですね」(マネージャー・N氏)